■科学史・科学哲学10の問題——Galison 2008

Peter Galison, “Ten Problems in History and Philosophy of Science,” Isis, 99 (2008): 111–124.

ほかの多くの分野同様,科学史・科学哲学(HPS)も誕生以来さまざまな変化を蒙ってきており,たとえば,科学史家は哲学的問題を避け,科学哲学者は歴史に対する興味を失った.ここでは,両者が協働しうる10個の問題を提案したい.

  1. 文脈(context)とは何か.また,文脈による説明にどの程度の説明力を認めるべきか.
  2. 純粋科学の純粋性(purity)とは何か.それは各分野ごとにどう異なるのか.基礎科学(fundamental science)との違いは何か.純粋科学の反対は何か.
  3. 19世紀から20世紀にかけての専門分野の分け方では捉え切れないような新しい分野が多く出現したが,それらのあいだをまたぐような概念がある.そうした概念に対する有効な議論の方法は何か?歴史的にはどうアプローチするか?
  4. 自然物と人工物の区別を問い直すこと.人工放射性元素や組み換え遺伝子の例.
  5. 上の問題は倫理学との関連からも興味深い.何をつくってもよいのか,どう分析するべきか.
  6. テクノロジーの政治学.たとえばテクノロジーの発展にともなうプライバシー概念の変遷など.
  7. 局所的なマイクロヒストリーでは典型性という概念は素朴には使えないが,にもかかわらずその事例研究は何か一般的なものの例示だと考えられている.それは何か.また,事例研究は何のためにあるのか.
  8. 上の局所的な探究からは見ることができない科学的実践や議論があるはずだ.それはどのようなものか,またそれはグローバルなのか.
  9. (a) 哲学的枠組みに縛られない歴史を書くことは本当に可能か(仮借なき歴史主義の可能性).(b) 歴史化されない歴史的説明の要素を見つけ出せるか.
  10. 政治が絡むところでの疑惑や論争とはそもそも何であるか.HPSが何をなせるか.
Written on January 21, 2019.