■シュレーディンガーの統計力学——Hanle, Schrödinger's statistical mechanics (1975)
Paul A. Hanle, “Erwin Schrödinger’s Statistical Mechanics, 1912–1925”, PhD. Dissertation, Yale University, 1975, Preface.
1926年以前のシュレーディンガーの研究のうち,およそ半数が統計力学に関するものである.この博士論文は,1912年から1925年にかけて,ヴィーンとチューリヒでシュレーディンガーが行った統計力学の研究のうち,原子の実在性からの帰結,個体の比熱および格子振動,量子理想気体の統計力学を検討する(シュレーディンガー本人はこの他にも,古典力学を電気的相互作用に適用する試みを行っているが,これは扱わない).彼はボルツマンから運動論の研究プログラムに関して大きな影響を受けた.またヴィーンでの指導教員だったエクスナーからは,物理法則の統計的性質や,具体的な研究トピックの設定などで大きな影響を受けたが,1920年になるまでは,ヴィーンは量子物理学に関してはそれほど生産的な場所ではなかった.シュレーディンガーは1920年からいくつかのポジションを渡り歩くが,1924年からはチューリヒで理想気体の量子統計力学の研究プログラムを開始する.これと波動力学が,チューリヒでの大きな成果だった.量子理想気体の研究はまた.波動力学建設の背景をなすという意味でも重要であった.
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Written on August 27, 2017.