■シュレーディンガーの量子理想気体の理論——Hanle, Schrödinger's statistics of gases (1977)

Paul A. Hanle, “The Coming of Age of Erwin Schrödinger: His Quantum Statistics of Ideal Gases”, Archive for History of Exact Sciences 17 (1977): 165–192.

1924年〜25年の彼の量子理想気体理論の発展を追う(波動力学の論文は1926年の出版である).1914年,ネルンストが低温領域での気体の「縮退」について述べて以来,量子理想気体は物理学者たちによってさかんに論じられた.シュレーディンガーは1920年ごろからこの問題に興味を持ち始め,1924年にこの問題に関する最初の論文「気体の縮退と平均自由行程」を出版した.彼はとくに,理想気体のエントロピーが示量性を持つかどうか,という問題に興味を持っていた.1925年のボースとアインシュタインの新しい統計により,気体のエントロピーの計算方法について,プランクとシュレーディンガーのあいだで激しい議論が闘わされることになったが,これを通じてシュレーディンガーは古い統計と新しい統計を綿密に検討し,注目を浴びることとなった.「アインシュタインの気体論について」(1925)に代表されるシュレーディンガーの貢献は,現在の統計熱力学からすれば的を外しているとも思われがちだが,物質波など波動力学の前提をなす発想が使われているという点でも重要である.

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Written on August 27, 2017.